アナリストとしてゲームのプロチームに参加した人の話

 ここ2、3年ほどのオンラインゲーム界を牽引しているRiot社のLeague of Legends(以下LOL)では、非常に競技シーンが活発でありNA、EU、中国、韓国などの地域ではプロリーグが成立しているほど。プロチームはリーグで勝ちを重ね、世界大会で頂点を取るためにしのぎを削っているのだが、彼らは単にゲームをするメンバーだけで成り立っているのではなく、マネージャーやコーチ、他にアナリストを雇っているところもある。今回はそうしたプロチームのひとつであるAllianceで、リモートアナリストを務めたParthさんが、自分の仕事について記事にしていたので、いつも通りテキトー訳をしようと思う。ちなみに上述の世界大会は韓国で開催中であり、10/19に決勝が行われるので興味があれば是非。年々規模が大きくなりつつあるe-sportsの熱気が伝わるかと。HPはこちらから。LOLの概要を知りたい方はここを参照(Analysisの部分はルールを知っていないと分かりづらいと思う)。

 

 

先月、私はAllianceのリモートアシスタントとして、そして練習試合や、心構えやアプローチなどについて補助の意見をいう仕事をする機会を得た。このプロセスに関われたこと、この短い旅の一部をシェアさせてくれたことをJordan*1に感謝したい。非常に貴重な経験だったし、プロシーンについて良い識見を得ることが出来た。

Introduction

誰かがLeviathan*2にask.fmで質問して、そこでJordanがプロシーンに入ろうとしているアナリストの助けをしたいということを述べていた。私の本来の目標は単に分析を行うことだけではなかったけど、これは面白い経験になると思ったから履歴書とBoeingのプロジェクトマネージャーが書いてくれた推薦状を、私のウェブサイトとNAのチームに紹介してほしいという頼みを添えて彼に送った。彼もスケジュールが混んでいるだろうから、世界大会が終わるまでは返信が来るとは思っていなかった。だからほんの数日で返信が来た時は嬉しかったけど驚いた。そこには、私の能力に感心し、私の考え方はとても役に立つと考ているということが書かれていた。加えて、私が世界大会で彼とAllianceに手を貸すことに興味があるか尋ねられた。私はそのプロセスに関われることそのものにとても興奮して、すぐにSkypeで彼を登録した。

 

(元記事ではそのメールが画像として張られています。)

 

次の日、私達はSkypeで初めて話した。彼は私の記事をいくつか読んでくれて、チームにいい影響になると考えてくれた。私達はいくつか核となるトピックについて掘り下げ、彼らの練習試合をレビューしメモをとることが最初の課題になった。それらはBaronReplayという今まで使ったことのないソフトのファイルだったが、とても直感的でセットアップは容易だった。2、3日して、また練習試合をビデオに録画し、youtubeにプライベート設定でアップロードすることをまかされた。これで選手たちは他のデバイスでビデオを見ることが出来るようになった。彼はまた選手たちのために試合のビデオライブラリーを作るアイディアにも触れたのだが、それはいつものシーズン中にとても有益だと思った。

Analysis

練習試合のデータを録画した後、私はNJWS、C9*3と名付けされた7、8人のチャットグループに招待された。そこでの議論に参加することはとてもおもしろかったが、自分が貢献しているとは思えなかったため、参加するのをやめた。かわりに、Jordanが誰かにC9とNJWSについての概要のプレゼンをしてもらいたがっていた。アナリストとしての見方で試合を見直すのはとても面白そうだとおもった。私はどちらのチームの一般的な傾向は知っていたから、どちらも上手くやっていて、さらにAllianceにいくらか欠けていた、戦略面に焦点を絞ることに決めた。私はC9のプレイオフの8試合と、NJWSの苦戦した10試合*4を見直し、詳細なメモをとった。そして、そのメモを個々の選手と彼らの傾向について、同様にどのようにチーム構成に関して考えているかというサマリーに落とし込んだ。私はJordanやAllianceの選手たちがこの成果をどう活用するかわからなかったけれども、プレゼンはその考えを当てにするということなら、容易に三倍の量になり得た。私はビジョンコントロールにフォーカスすることに決めたけれど、オブジェクトベースの行動やチームファイト/小規模戦の戦略はおなじく重要だった。*5これらの要素を、筋の通るチーム戦術として統合してしまう前に、分割して研究したことは西欧のLOLの分析への次の一歩だ。

 

(元記事にC9、NJWSのプレゼンファイルあり)

C9のビジョン戦略とピックの見積もりについてのGS前の調査

練習試合で、Allianceの一番の弱点はビジョンコントロールであることがわかった。それによって序盤のドラゴンコントロールを失い、相手チームにマップを自由にロームさせてしまっていた。*6このことを指摘したら、Jordanは彼らはゲーム序盤でのこの問題は解決しつつあるが、いまだに中盤、終盤でのディシジョンメイキングに苦戦しているとも述べた。わたしはこのトピックについて、Challengerシーンのチームに少し関わったときも考えていた。*7私は、ゲーム内リーダーのために中盤から終盤でのオブジェクト・ビジョンコントロールと行動の分析を手伝い、それぞれの改善の仕方について忠告をした。これら忠告の中には主要なオブジェクトや戦いの前の、部分部分のチームビジョンについて吟味することやチームの行動を見直すことも含まれていた。次に、私はリプレイ中のいくつかのポイントで再生を止めて、ゲーム内リーダーと各々のチームの構成、強み、本来のやりたいことについて話し合うことを薦めた。リプレイの残りを見る前に、期待していた結果と、実際の結果の違いを評価するためだ。他にも、ビジョンコントロールを過剰におこなって情報の価値を認識したり、構成の長所を活かす効率を上げるため、装備の質を下げてみる*8といったことなども提言した。

NJWSのビジョン戦略と行動についてのGS前の調査

次に、それぞれのチ―ムが前日の試合までに行ったpick/banを教えてもらった。頼まれては居なかったけれども、友人の助けを借りつついくつかのpick/banのシナリオについて考えておくことを決めた。ZedやRumbleといったAlliance側の確実なban、相手チームがおそらくはIrelia、ことによるとZileanをbanすることを想定し、次のプレゼンを、チーム構成、そのシナジー、それぞれの洞察へのアプローチのしかたに焦点を当てた。私は選手たちとpick/banやプライオリティについて話す機会が得られなかったので、彼らのチャンピオンプールやリソースの割り当てについて、私の知識で十分であることを祈った。全体で言えば、私はビデオのレビューとアイディアの議論、プレゼンの作成に約60時間ほどを費やした。

 

(プレゼンも元ページにあります。)

Issues

分析のほか、Jordanと私は試合やトーナメントへのアプローチについてたくさん話した。まず、期待されていることとメンタリティについて考えた。その時には、彼は選手たちが彼らの調子と能力を信用しておらず、韓国のトップチームには勝てないと思っていたことを心配しており、ソーシャルメディアで彼が示していた自信へのコミュニティの反応も気にしていた。私自身の経験とEvan McCauleyとの会話*9から学び、私達は能力に自信をもつことと、自信を表に出すことの問題の違いについて話した。謙遜することでコミュニティの期待を下げ、選手のプレッシャーを減らし、目の前のことに集中できるようになるというのが私の主張だった。次に、Evanと私が始めに話したように自信を醸成する方法を指摘した。それは、同僚であるチームメイトの能力についての考えを再確認することや、グループで話す代わりに一対一の会話で建設的な批判をすることにまで及んだ。単に議論だけで、私は考えを述べただけだったが、サポートスタッフがこれらの問題を熱心に考え、解決を試みていることを知ったのは励みになった。

Final Thoughts

チームと一緒に仕事する機会をくれ、経験を共にさせてくれたJordan には感謝したい。Allianceはまだ学ぶことが多いけれども、西欧のチームは少なくとも中国のチームとは張り合えるし、韓国のゲーム界とのギャップを急速に埋めていると信じている。しかし、効果的なサポートと拡大しつつあるプロフェッショナリズムの到来は西欧のゲーム界が更に先に進むための次のハードルだ。私は業界に入るための興味と熱意を備えた人を励ましたいと思う。私の経験では、この業界の誰もが新しいメンバーをよく受け入れてくれるし、成長を助け、励まそうとしているよ。

*1:Allianceのコーチ

*2:Jordanのアカウント名

*3:正確にはNajin White ShieldとCloud 9。どちらもプロチームで、それぞれ韓国、NAを拠点に活動しています。Allianceも参加する世界大会のGSで戦う相手です。

*4:おそらく2014 Season Korea Regional Finalsの試合かな。具体的に言及されていないのでわかりませんが。

*5:ビジョンコントロール、つまりマップの視界をどのように取るか、というのはLOLの試合ではめちゃくちゃ重要です

*6:ドラゴンはオブジェクトの一つで、これを倒すとチーム全体にお金と経験値が与えられます。ロームはマップ上を動きまわること。ビジョンがないと相手チームがどのように動いているのかわからず、待ち伏せやオブジェクトがコントロールされる危険が高まる。

*7:Challengerシーンというのはプロリーグの一つ下のリーグのことで、ここで結果を出す(そこでもリーグがあり昇格戦があります)とプロリーグへの参加が認められます。

*8:ここ、訳に自信がありません。原文は"scaling back the amount to increase efficiency in order to complement compositional strengths."

うーんとなって、"scaling back the amount in order to increase efficiency of comlementing compositional strength."という感じに読み替えて訳しました。

*9:https://threetwonine.squarespace.com/tminus/2014/9/3/interview-with-evan-mccauley-junior-national-curling-champion-and-aspiring-e-sports-psychologist