DARKER THAN BLACK 黒の契約者、流星の双子

気になってはいたものの見る機会がなかったが、Netflixで1期2期ともに公開されていたので36話を一気に視聴した。約3クール分、オリジナルでこれだけ見せるアニメもそうない。

 

1期では1エピソードが前後編に分けられている。エピソード間はある程度独立しているが時系列順ではあり、物語が進むにつれ主人公ヘイの過去、ヘイが属する〈組織〉とは何か?何を目的に動いているのかといった謎が明らかになっていく。

 

言うまでもないことだが本作が面白いのは、物語が終わってもなおわからないことばかりの〈契約者〉という存在の描き方にある。エピソードはヘイが〈組織〉から受けた仕事を軸にして進む。その仕事は大抵〈契約者〉絡みであり、最終的にはヘイと敵の〈契約者〉の戦闘で終わる。〈契約者〉たちは超能力みたいなものを持っていて、能力を使った迫力のあるアクションシーンは本作の大きな魅力である。だが、この作品が描いているものは、〈契約者〉のドラマだ。それは明らかに「ヒューマンドラマ」といえるような質のもので、ここに面白さがあるのだ。というのも、作中において〈契約者〉たちは「〈人間〉ではない存在」として扱われているのである。〈人間〉ではない存在による「ヒューマンドラマ」として成り立ってしまっているのである。

 

〈契約者〉と〈人間〉を分かつもの、それは〈契約者〉の行動原理にある。彼らは感情や情動をもちあわせておらず、合理性だけで物事を判断し行動するとされている。のだが、本作では合理的ではない判断を行う〈契約者〉たちが物語の中心にいる。非合理的な選択肢を選ぶ者たち。感情的になってそのせいで死に至る〈契約者〉。〈人間〉によってひたすらに〈契約者〉と〈人間〉との境界が強調されるのは、その境界こそが〈人間〉の生き残る道であったことを示している。〈人間〉は〈人間〉でいるためにその境界にすがらなければいけなかった。一旦その境界が決壊してしまえば、そこに〈人間〉はいなくなってしまう。従ってやるべきことは、境界を維持しながら向こう側を消滅させること。一方〈契約者〉は、〈人間〉の攻撃から身を守らなければいけない。〈組織〉とEPRの戦いはこの境界を巡る攻防戦であった。

 

しかし、主人公ヘイはこの境界に立っている。内と外、その二分法に囚われない領域に立っている。ヘイが最終回で選んだのは、決してどちらも取る選択肢ではない。むしろ第三の道。この境界それ自体を拡散させること。象徴的に現れるゲートは、ただ内と外を分かつ役割だけを担わされていたのではなく、またそれ自身の内部にある広がりを物理的に指ししめす指標であった。