鑑賞力を鍛える見方

 

現代アートの本当の見方  「見ること」が武器になる (Next Creator Book)

現代アートの本当の見方 「見ること」が武器になる (Next Creator Book)

 

 山木朝彦「鑑賞力を鍛える見方」pp.154-161より

よりアクティブに作品を「見る」ための、3つの方法

  1. 常識的な方法
  2. 批評的な方法
  3. クリエイティブな方法

常識的な方法

常識的な方法は、作品を凝視し、可能ならば、手で触れて、考えることです。これは、一般に、鑑賞者が知らず知らずのうちに身につけている惰性的なものの見方から離れるための方法です。

 「惰性」とは随分なものいいだが、アートとは日常的なものの見方から身を離すことなのだ。そして、「アートを見る」という段階においても、同じようにアートをみる日常的な方法の力学が働いてしまっている。

 「美術館」に「展示」された、著名な「アーティスト」の「作品」を「鑑賞」しているのであり、詰まるところ、これら括弧で括られた言葉の背後に潜む「制度」に雁字搦めになった自分が、同じように制度に縛られた他者と同じ見方をしているだけなのです。

 だから、「あらん限りの眼力で凝視してみる必要がある」。

批評的鑑賞力

 社会的・文化的コンテクストのなかに編み込まれてきた美術作品。だからこそ、このコンテクストに潜り込むことを意識的に行いながら、それらの制度から自分を引き離すことが求められる。

クリエイティブな方法 ――「擬似的にアーティストになってみること」

探求のためのプロセスとしては、そのアーティストはどうして、この作品を創ったのか、創りたくなったのか、創らざるをえなかったのかという初発の動機から始まり、どこで制作したのか、どうやって制作したのかというプロセスのこと、そして、どうやって運んで、なぜ、個々に展示したのかという創作後の展示の工夫までをリアルに想像してみるとよいでしょう。そして、アーティストや作品そのものの背景にある社会的コンテクストは何なのだろうかと、人物のプロフィールや思想性に共振する努力も求められます。